2008年10月15日
ホンダ2馬力船外機 同梱工具だけでできる簡単メンテナンス

船外機本体には、日常メンテナンスを行うのに最低限必要なツールセットが同梱されています。下の表はサービスマニュアルに掲載されている定期点検項目の一覧ですが、同梱工具だけでもほとんどの点検項目が実施できます。
船外機を長くお使いいただくために、必要なメンテナンス方法は覚えておきましょう。
の項目は同梱工具だけで点検・交換が可能です。
今回は10時間運転後または1ヵ月後の最初の点検で必要になる項目を解説します。


HONDA BF2船外機 定期点検項目
点検項目 作業
使用毎
10時間運転毎
または
初めの1ヶ月目
50時間運転毎
または
6ヶ月毎
150時間運転毎
または
12ヶ月毎
1 アノードメタル 点検
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2 スターターロープ 点検
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3 エンジンオイル 点検
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交換
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4 ギヤケースオイル 点検
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交換
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5 スパークプラグ 清掃、調整
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6 タペット隙間 点検、調整
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7 フュエルタンク、フィルタ 清掃
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8 フュエルチューブ 点検
2年毎
交換
4年毎
9 アイドリング 点検、調整
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10 クラッチシュー、アウター 点検
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11 スイベルケースライナー、ブッシュ 交換
3年毎
12 ウォーターシール 交換
3年毎
13 各部の給油、グリス塗布 給油、塗布
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14 各部締め付け 点検、増締め
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15 プロペラ、割ピン 点検
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1. アノードメタルの点検
アノードメタルはギヤケースについている亜鉛製の部品です。目視で点検を行い、元の状態から半分くらいの体積にまで減っていたら交換が必要です。
交換時に必要な工具
スパナ
2. スターターロープの点検
スターターロープを引き出して、ほつれ・擦り切れがないか点検をします。必要なら交換をします。
交換時に必要な工具
スパナ
プラスドライバー
3. エンジンオイルの点検、交換
オイル点検窓でオイルレベルを確認します。エンジンを停止し、船外機を垂直の状態で行います。オイルが少ない場合は補充を、汚れている場合は交換をします。オイル交換を行う場合はドレンボルトのシーリングワッシャも同時に交換します。
交換時に必要な工具
マイナスドライバー
4. ギヤオイルの点検、交換
ギヤオイルレベルチェックボルト、オイルドレンボルト、ワッシャを外してオイルを抜き取ります。ギヤオイルに水が混入しているとオイルが白濁(乳化)します。水が混入している場合はパッキン、ウォーターシールの損傷とギヤケースの締め付けを点検します。
交換時に必要な工具
マイナスドライバー
5. スパークプラグの清掃、調整
エンジンカバーとプラグキャップを取り外して、付属のプラグレンチを使用してスパークプラグを取り出します。プラグクリーナーまたはワイヤブラシで電極のカーボンを落とします。
交換時に必要な工具
プラグレンチ
点検・調整時にあると良い工具
プラグギャップゲージ
プラグクリーナー
13. 給油とグリスアップ
グリスアップ点検箇所は以下の通りです。
1. スロットルケーブルジョイント
2. スロットルケーブルジョイント(キャブ側)・チョークロッドジョイント
3. スターンブラケットナット、スラストラバー
4. スイベルケースボルト・チルトロックアームシャフト
5. ステアリングハンドルピボット
6. スターンブラケットクランプボルト
7. スイベルケース
14. 各部の増し締め
エンジンブロックに使用されているボルト・スクリューにはそれぞれ規定トルクがあり、トルクレンチが必要です。各所の規定トルクはサービスマニュアルをご参照下さい。
上記13項の2〜6の部分には規定のトルクがありませんが、緩みが出ていないか点検をしておきます。
15. プロペラ、割りピンの点検
・プロペラ
割れ、欠け、異常磨耗がないか確認をします。異常があれば交換をします。
・割ピン、シャーピン
プロペラを取り外したら割ピンは交換します。シャーピンに変形などないか確認をします。
交換時に必要な工具
プライヤー
DIYオーナーの必須アイテム
サービスマニュアル&パーツカタログ
メンテナンスや修理を全て自分の手でやってみたい、というDIY派オーナー様必携のサービスマニュアルとパーツカタログ。メンテナンス方法・故障の診断方法、わからないことがあるときは、まずサービスマニュアルを見れば解決できます。





困った時のアドバイス

〜故障かなと思ったら
2馬力船外機の場合、実際のトラブルのほとんどが燃料系か電気系が原因です。そしてその多くは取扱説明書をきちんと読むことで防ぐことができます。このお役立ち講座は、取扱説明書の中から実際に事例が多いものをピックアップし、メーカーサービス担当者からの情報を織り交ぜて説明してあります。困った時に思い出して点検してみてください。

ただし、深入りしてむやみに分解するのはやめてください。簡単な点検の次は、必ずお買い上げの販売店に相談してください。

(1) エンジンがかからない
●燃料
点検 原因 解決方法
キャブレターに
燃料がきていない
(※1)
燃料タンクにガソリンがない 補給 (参照:お出かけ前の点検 P25-P28)
燃料コックが開いていない 燃料コック レバーを”運転”の位置にする
(参照:エンジンのかけ方 P29-P32)
通気ノブが開いていない(※2) ノブを開く (参照:エンジンのかけ方 P29-P32)
燃料タンク フィルタの詰まり(※3) 販売店にご相談ください。
燃料ホースの折れ曲がり(※4) 折れ曲がりをなおす
キャブレターに
燃料はきている
(※1)
キャブレターのオーバーフロー 販売店にご相談ください。
キャブレターの詰まり

(※1) (写真1) キャブレターに燃料が来ているかどうかの確認は、ドレンプラグを抜くとすぐにわかります。ドレンプラグはアンダーカウルを下から覗き込むと見えます。キャブレターのフロートチャンバーがこの部分にありますので、通常はドレンプラグを抜くとガソリンが出てきます。出てこない時は異常ありということになります。
燃料は少量であるほど早く劣化します。2馬力は特にタンク容量も小さく燃料ホースやキャブレターなどの部品も小さく繊細なものを使用していますので、劣化してゲル化したガソリンや沈殿物は燃料系統の詰まりなど、直接的な影響がすぐに現れます。 使いかけの燃料を残しておくと夏場などはものの1か月で劣化してしまい、エンジンに悪影響を及ぼしてしまいますので、使わない時には必ず燃料をきれいに抜き取って保管しておくことをおすすめします。燃料の抜き取りに関しては、取扱説明書の「保管のしかた P44-P46」の項目をご参照ください。

(※2) エンジンがかからないというトラブルで、もっとも多い原因がこちらの通気ノブの開け忘れです。通気ノブが開いていないとタンク内の気圧がさがって燃料がキャブレターに下りなくなってしまいます。揮発性の高いガソリンなので、保管の時は必ず通気ノブを締めなくてはなりませんが、使用時に開けることを忘れずに。
(※3) 燃料タンクフィルターは、タンクの奥底にあり(写真3)、明かりを照らせば所在程度は分かるものの、詰まりの有無までは視認することは困難です。フィルターそのものの点検は取り外さなければできませんので、自信のない方は販売店へ持ち込みされることをお勧めします。
(※4) (写真2)燃料ホースはタンク底からキャブレターへ向かって30センチほどの長さで伸びているのが分かると思います。特に確認するところは、曲がりの部分です。ここでホースがつぶれてしまっていると燃料が流れにくくなります。簡単に治る程度の曲がりであれば良いですが、完全に癖がついてしまっているような場合は交換が必要です。そのようなときは持ち込みをして頂く方が良いと思います。




写真1
写真2
写真3

●電気
点検 原因 解決方法
スパークしない
または
スパークが弱い
点火プラグの汚れ(※5) 清掃
【参照:点検整備のしかた(P48-P59)内のP52】
火花すき間不良 調整
【参照:点検整備のしかた(P48-P59)内のP52】
プラグの破損 交換
【参照:点検整備のしかた(P48-P59)内のP52】
高圧コードの電気リーク 販売店にご相談ください。
イグニッション コイル不良
ワイヤ ハーネスの不良
停止スイッチ コードの電気リーク
停止スイッチの戻り不良
点火プラグの締付け不良 点火プラグを確実に締付ける
【参照:点検整備のしかた(P48-P59)内のP52】
非常停止スイッチ クリップの取付け不良 クリップを確実に取付ける
(参照:エンジンのかけ方 P29-P32)
(※5) 電気系統のトラブルに関して、本田技研でもスパークプラグを主原因とするもの以外はほとんど報告事例がありません。上記のようにトラブルシューティングにはいくつか項目が挙がっておりますが、イグニッションコイルやハイテンションコードなどの部品トラブルはまずないと考えて良いでしょう。燃料系統に異常なしと判断された場合は真っ先にプラグを確認して下さい。写真Aは良好な状態です。Bは電極消耗、正常な消耗具合ですので、プラグを新しいものに交換すればOKです。C〜Eは異常燃焼の兆候です。発生事例は全くと言って良いほどありませんが、もしこのような状態を発見したら速やかに販売店へ相談して下さい。





写真A
写真B
写真C
写真D
写真E

(2) 始動してもすぐ止まる
●燃料
点検 原因 解決方法
燃料タンクにガソリンはある ガソリンに水が混入している 販売店にご相談ください。
通気ノブが開いていない ノブを開く:27頁参照
燃料タンク フィルタが詰まっている 販売店にご相談ください。
エア スクリュの開きすぎ
アイドリングの低過ぎ
キャブレターの詰まり
燃料タンクにガソリンがない ガス欠 給油する

(3) 実際にあった珍しいケース
「始動してもすぐに止まる」原因のほとんどは通気ノブの開け忘れなのですが、ごく珍しいケースで、開き過ぎて通気が悪くなったことがあります。通気ノブを回しすぎてしまうとごく稀に通気孔が塞がってしまうことがあります。取扱説明書に書かれているように2〜3回回すだけで十分です。

もうひとつ、珍しいケースですが、船外機をチルトアップし過ぎて燃料が回らなくなり、エンジンが停止してしまうということもありました。燃料ホースを見て頂くと分かるのですが、燃料タンクから落ちた燃料はポンプを介さずに重力だけでキャブレターへ向かいます。キャブレターの位置が相対的に高くなると燃料が回りにくくなり、タンクの残量次第では燃料が届かなくなり、エンジン停止してしまいます。取扱説明書の「船外機の正しい取り付けかた P21-24」を参照し、正しい角度で取り付けるように心がけてください。 ゴムボートで充気が不十分だった場合にも同じ現象が起きた事例があります。チルトアップし過ぎている状態でなくとも、ボートがたわんでいる状態では船外機が傾いてしまい、上記と同じような状態になってしまいます。ゴムボートの場合は充気圧にも気をつけましょう。


ワンポイントアドバイス
1 エンジンオイル
「始動してもすぐに止まる」原因として取扱説明書のトラブルシューティングには書かれていませんが、是非とも皆さんにお願いしたいことがあります。それは「オイルを入れ過ぎない」ことです。2馬力の場合は容量が少ないのでうっかりしているとつい入れ過ぎてしまうことがあるのですが、オイルが多すぎて燃料系統に回ってしまうと、白煙をモクモクと上げ、アイドリングが不安定になったりエンジンが停止してしまうことがあります。オイル量の既定値はご存じのとおり、点検窓の上端ですが、2馬力船外機は意外とオイルを消耗しています。面倒でも毎回点検し、減った分を補うようにしていくと良いと思います。また、船外機の置き方も正しく守るようにお願い致します。(取扱説明書「保管のしかた P44-P46」参照)横倒しで置く場合にティラーハンドルを上にむけるのは部品の保護を目的とする面もありますが、キャブレターに燃料やオイルが回り込まないようにすることも重要な目的です。
2 ギヤオイル
過去にあったその他のトラブルをご紹介していきましょう。 ギヤオイルに水が混入すると白濁するのですぐにわかります。原因はほぼ100%パッキンの傷みです。ギヤオイルのパッキンは、ギヤオイルを交換する度に新しいものに変えておくようにしましょう。値段も100円くらいなので、ギヤオイルと一緒に買っておくと良いです。

オイルドレンスクリューの頭をつぶしてしまった
特にエンジンオイルのドレンスクリューは出荷時に固く締められており、サイズの合ったドライバーを使用しないと力が入らずに、ネジ頭を傷めてしまいます。同梱されている工具ではまず無理だと思います。完全に舐めてしまうとかなり面倒なことになりますので、最初の交換をする時にはキチンとサイズの合ったマイナスドライバーを用意することをおすすめ致します。

ネオネットマリン担当者からお願い
●万一修理が必要になった時に備えて購入時の段ボールは保存しておくとよいと思います。ありあわせの段ボールではなかなかこのサイズのものを入れられるような大きさのものは見つかりませんし、もしあったとしてもしっかりと固定することができずに、輸送時の破損事故など2次被害を招くこともあります。さいわい、ホンダは梱包材として発泡スチロールを使用していませんので、段ボールはすべて折りたたんでおくことができます。きれいに折りたたんで押し入れの隅にでも保管しておいて下さい。

●商品を発送する時にはオイルとガソリンをしっかりと抜いてティラーハンドル側(キャブレター側)を上にして置くことを忘れないようにお願いします。キャブレターが下側になるとエンジン内のオイルがキャブレターに流れ込んで、量によっては漏れてくることもあります。オイルやガソリンが漏れると運送屋さんに迷惑がかかるだけでなく、オイル自体がキャブレターに回ってしまうとそれだけで不調を招くこともあり、現象を正しく再現できないことがあります。

●部品が必要になった場合は部品番号を調べなければいけませんので、パーツカタログを持っていると便利です。お持ちでない方は船外機のプレートで号機番号をご確認の上、当店までお問い合わせ下さい。

●今回の特集は取扱説明書から抜粋して作成しました。取扱説明書は本田技研のウェブサイトで公開されていますので紛失されたときなどはこちらをご参照ください。